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第二回 Vol.3 AI導入・拡大の成否を決める要素

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第二回のアジェンダは、AI導入によるDX推進の仕掛けと人材育成について。
TCA推進案件の状況と課題(2)<アドバイザリーボードVol.2> の続きです。

AI導入・拡大のカギとなる5つの要素

ACN保 科
私が携わるAI案件は年間100件以上で、いろいろな会社にAI導入を支援してきました。単にアナリティクスやAIを導入するのではなく、どのように業務に組み込んで拡大させるかについて特に苦労しています。ここでは、その内容をお話しします。

一般的な調査の結果ですが、グローバル経営者はアナリティクスやAIを業務に活用すべきと感じています。
それに加え、次の5年でAIを拡大できなければ倒産してしまうと感じている経営者が、日本でもグローバルでも75%程度いるという衝撃的な結果となっています。一方で拡大に苦労しているという方も75%程度。AIを活用しなければならないがどうしてよいのかわからないというのが実態であり、私の肌感覚とも合致しています。
そのような中で、重要となる要素は以下の5つです。
2021年 AI時代を迎えるあたりキーとなる5つの要素
一つ目がマインドセット。RPA(robotic process automation/事業プロセス自動化技術の一種)のように今ある業務を自動化するというものでなく、根本的に業務があるべき姿になっているのか、また、今あるものを良しとせず本来あるべきものが何なのかを見直し、新しい技術で新しく業務を組み立てなおすことがDXの本質だということに対する理解です。

二つ目がエクスペリメント、実験のことです。機械学習はやってみないとどのような結果が出るのか分かりません。私もプログラムを開発していてよく感じることです。リーダーの責任としては、失敗を許容するに留まらず、むしろ推奨することが必要です。

三つめがリーダーシップ。失敗を推奨すると言っても中部電力のようなインフラ企業のように業務の性質上失敗が許されない場合もあります。また、私が最近取り組んでいるヘルスケア業界でも、人の命に係わる部分は失敗が許されません。失敗してよい部分と守らねばならない部分の線引き・区別が必要です。

次にデータ。機械学習はデータあってこそのものです。
PoC(Proof of Concept/概念実証)でよい結果が出ても、継続的に結果を出すには新鮮なデータが必要なタイミングで得られることが必要です。
ありがちなのは、集めたデータがそのタイミングではよいものでも、それが陳腐化しても機械学習で用いてしまい失敗するというケース。これは、海外を中心に多くあります。
航空会社のダイナミックプライシング(価格を需給などの条件によって変動させる、変動価格制)において、古いデータでモデルを開発していたがために、ものすごい機会損失を出していたというケースも海外でありました。データサプライチェーンを意識して環境を作ることは大事なことです。

そして、やはり最後に大事になるのは使う人間のスキルです。

失敗に繋がる3つのケース

ACN保 科
これまで関わってきたAI案件の中でうまくいかないケースをまとめると以下の3点になります。

まず1点目が、顧客体験および業務全体を踏まえたサービス設計ができていないケース。
需要の予測などについて、精度はもちろん重要ですが、それをどのように業務に落とし込んで活用するのか、そのために精度をどこまで高めるのかがより重要です。至極当たり前のことですが、そもそも実現しなければならない顧客体験は何か、この業務はどうあるべきなのか。これを外している案件はうまくいきません。

2点目は、実業務に適したAIを選定できていないケース。
「AIといえば、この会社がサービス提供しているので」と、なんとなく任せてみようといった事例が多いです。何でもできるAIや会社というのはないため、適切な技術を選んでいかなければいけません。
しかし、AI戦国時代と言われ、さまざまな技術がある中で適切なものを選ぶのは難しいことです。私自身も最も工数をかけている部分です。ここでは、世の中にどのような技術があるかを幅広く理解することが重要です。

3点目は、既に業務にある「基幹システムを構築・管理する人」と「AIを使う人」が相互のことを理解できていないケース。これは、AI拡大のポイントでもあり、分析を業務に適用する段階において見られます。
周辺システムを含め、全体の設計ができないことが失敗の要因となりますし、私自身もすごく苦労している点です。
若くて優秀なデータサイエンティストでも、基幹システムの構築経験がないと、基幹システムにAIを埋め込むときに何が発生するか、想像力が足りないことがあります。逆に基幹システムの構築経験がある人でも、機械学習の仕組みを理解できないことが散見されます。そこをうまく統合することが大切であり、中部電力も直面するタイミングがあるかもしれません。
Vol .4 AIを活用するための仕組み~拠点戦略/AI CENTERの事例~ に続きます。