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第二回 Vol.5 中部電力グループのDX戦略とTCAの機能

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第二回のアジェンダは、AI導入によるDX推進の仕掛けと人材育成について。
AIを推進する拠点戦略~AI CENTERの事例~<アドバイザリーボードVol.4> の続きです。

経営・実務面からみたDX・人材育成の課題

TCA野 田
人材育成については既に中部電力パワーグリッドと取り組ませていただいており、プログラムも整備しつつ、各事業会社に展開しようとしています。これについては想定よりもニーズが強いため、正規のビジネスとして整理していきます。
加えて、中部電力の各事業会社は適切な壁打ち相手がいないがために、自らの課題を適切に表現できない状態になっていることが大きな課題です。
現状ではTCAのコンサル部隊が壁打ち相手をしており、中部電力としても必要な機能だと感じています。TCAとしてはここにかなりのコストを要してしまっているという課題もあります。

しかし、このプロセスを経ないとしっかりとしたソリューションに繋げることができないため、お話しいただいたAIラウンジのような機能を持たなければならないと考えています。
これを経ることでコンサル部隊が伴走しつつ、データサイエンティストが高度な技術を使ってしっかりとソリューションに繋げることができます。

差し迫ってすぐ取り組む必要があるのは、「壁打ち」と「人材育成」です。
それらがしっかりとした活動として回り始めると、現時点でも目一杯で取り組んでいるTCAの人員が足らなくなるため、人材を追加しながら体制を再構築する必要があります。
TCA事業開始からの4ヶ月間で、そのような課題がよく見えてきています。
CE 増 田
壁打ちはコストがかかる部分ではありますが、それを行わないと外販などのビジネスに繋がらない側面もあります。
事業の中にどのように組み込むのかを考えなければいけないですし、そこから得られるものをしっかりと蓄積することで、TCAの5年後の規模感などが見えてきます。それをイメージして人材の採用などを計画的に行っていかなければいけません。
TCA野 村
IT基盤を統合していくことも、TCAの分析業務やDX推進に繋がると考えています。中部電力グループの社員は、個別の業務視点は持っていますが、部門・会社を横断した視点が乏しい傾向があります。
同じ取引に関連するデータベースでもバラバラで統合できてない部分があります。このような状態が効率的な営業活動の妨げになっています。

業務的な観点では極めて確認作業が多く、システム機能の半分はそれらに当てられています。簡単なAIで処理できることを多大な工数をかけて実施しています。それらの人員をより高度な業務に充てるために、TCAとして提案していくことが必要であると考えます。

データカタログの取組みも進めていますが、データを作るまでは懸命に取り組みますが、それを活用する観点が抜けていることも。これらを効率的に使用する仕組みの構築を、TCAとして引っ張っていく必要があります。

中電シーティーアイ(CTI)としても、中部電力の業務システムの運用監視をACNのセンターで行っています。本業務は旧来、スキルを持つ人材を相当な人数充てて行っていました。外注しようとしたときには、不可能だとの意見がありました。マニュアルもなく業務が属人化していたため、それらの業務を文書化しました。それにより必要のない仕事が一定数あることが判明し、その後運用してみると、更に業務が自動化できることが分かりました。
今までもコストダウンには取り組んでいましたが、外から業務を見ることでより踏み込んだ効率化を図ることができます。

CTIとして人材育成には、非コア業務を外注し、コア業務に多くの時間を割くという観点で取り組んでいます。当初は高度IT人材を年間50名育てる計画をしていましたが、結果として160名を育成できました。
昔のCTIは中部電力ITシステムセンター(ITSC)の作業補助のような形をとっていましたが、現在は、高度IT人材が中部電力グループのさまざまな箇所に100名程度出向し、活躍しています。
中部電力グループ内で競争するのではなく、外で戦ってける組織となるよう、TCAとしてはDXの観点から導いていく必要があります。
TCAの業務領域と必要ケイパビリティ

人材育成に関する2つの課題

CE 伊 藤
人材育成に関しては、中部電力の経営戦略本部で検討しており、課題としては大きく2つあります。

1つは、データ分析にかかるトップレベルの人材をどのように雇用維持するのかという点。それには給与体系とロケーションの問題があります。
中部電力の中でも仕事ができる人材は、待遇が上回る会社に転職してしまっているという事実があります。また、仕事量は東京の方が圧倒的に多いため、優秀な人材は東京に行ってしまいます。こういった問題をどのように戦略的に解決するのかという視点です。

もう1つは、TCAのような組織をどのように活用するかという問題。使う側にも一定のリテラシーが求められます。業務を効率化できる部分は間違いなくたくさんありますが、DXに疑問を持っていたり抵抗感を持ったりしている人は一定数いるため、その殻を破っていくことが大きな課題と認識しています。
TCA西 浦
TCAの中でも、ACNのような明確な形にはなっていないものの、案件に取り組むか否かのレビューや人材の配置、人材の育成は行っています。しかしながら、相談いただく案件を全てこなすようなキャパシティーが今のTCAにはありません。
そもそも、相談を頂いた案件について全てデータサイエンスを用いて取り組むべきなのかという話もあります。システムや業務と絡む問題であり、さまざまな観点から峻別やアドバイスを行う必要があるため、TCAの中だけで取り組む話ではないと考えます。

TCAも尽力しますが、中部電力ホールディングスと共に取り組みたいと考えています。中部電力グループ全体として何がよいのかを俯瞰的な立場で見ていかないと、部分最適と誤解されるリスクがあります。
TCA野 村
今後は中部電力の経営戦略本部を交え、大きなプロジェクトを組成しなければなりません。その中で、CTIやTCAが取り組む部分が出てきます。
TCA野 田
考えられる手立てをTCAから提案していきます。四ヶ月の実働で見えてきている部分も多くあります。さらに、半年、一年と続けていけばより多くのことが見えてくるため、その中で適した方法を提案していきます。

採用の可否や段階を踏んで向上させていくものもありますが、気づきを共有することもTCAの役割と認識しています。経営層だけでなく現場の担当者に対しても働きかけを行い、それが一つの人材育成の形になるのでないかとも思っています。

先ほど話がありましたが、内部向けの仕事に力を割き過ぎているという話は、TCAとして外から見ているとよくわかる部分もあります。
ACN五十嵐
ACNのコンサル部隊も最低限のリテラシーを持ちつつ、テクノロジーグループとコラボしています。
コンサルをするにしても、人事コンサルなどはTCAの業務範疇外となると思われるため別の受け皿が必要です。日本の会社は縦割りの文化が強く、それが企業の競争力の重大な阻害要因になっていることも。横ぐしを通すことも必要です。

また、DXは企業ガバナンスの側面もあるため、ボトムアップではどうしようもない部分があります。顧客情報のIT基盤のような話も、誰かが上から音頭をとって進める必要があると感じています。
それが従来のやり方で「できません」では済まない話。会社が淘汰されてしまいます。最初の4ヶ月でそういったさまざまな課題が見えたのはよいことです。
TCA野 田
想定していたよりも多くのことが見えました。案件が多かったこともあり、現状が非常によく見えたというのが感想です。
CE 増 田
CTIは業務改革を進めており、TCAを設立したことも相まって従来のCTIではなくなってきています。
TCAとCTIが上手く連携しながら、DXや人材育成の幅広い課題にどう取り組むのか、そして展開する仕組みをどのように作っていくかが肝要です。
DXのための機能をどう投下していくのかは、現場でも考えねばなりません。
Vol .6 経営戦略の中のDX に続きます。