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第六回 Vol.2 DX推進のための機能と組織②

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TCAと各社の棲み分け

繰り返しになりますが分析プロジェクトは単なる役割分担ではなく、共同作業です。
したがって、システム開発と同様に、ある程度の型ができあがった段階では、一度TCAはモニタリングをするような立場となり、データが追加される、顧客の動向が変わるなどの問題が起きた時に、再度、その課題に対して共同で取り組む形をとることも一案と考えられます。

一方で、一時的にTCAの役割が縮小された時に、システムユーザーが自分たちだけでデータ分析にかかる取組みを完結できると安易に判断することは危険です。
例えば、単純なシステムであれば完成後は業務側に引き継ぐこととなりますが、AIを使う場合には、MLOps(機械学習チームと開発チーム、運用チームの開発工程と運用工程をパイプライン化してデータ処理やコミュニケーションを円滑にするとともに、バージョン管理やデプロイなどの自動化によって生産性を向上させる考え方)の形で継続的に新しいデータを用いてより効果をあげることが重要となります。MLOpsの形が整備されることで、適切なタイミングでモデル更新する好循環が生まれることになるのです。
最新の知識が途切れてしまうことで古いモデルを使い続けて機会損失が発生していた事例や、モデルを運用するのに手一杯で他部門とのシナジーを産み出せなくなってしまったという事例もあります。
さらに悪いことに、そのような断絶された状況下では、優秀なデータサイエンティストは、自分が成長できないと感じ辞めてしまうことさえあるのです。
DXの世界では、常に最新の情報をキャッチアップしていかなければなりません。技術の進歩は凄まじく、それをウォッチしていく仕組みが必要であり、そのような機能についてもTCAが担うべきと考えられます。

DXの成功に向けて

この点での成功事例においては、業務の知見とデータドリブンで得られる新知見を組み合わせてコラボすることができていることが特徴です。そのような事例では、業務部門の人たちもデータドリブンの新知見を必要なレベルで理解できているという、理想的な形となっています。業務遂行の手法として、従来通りのものと分析モデルによるアウトプットの両方を比較考慮し、最適なものを採用できるようにした結果、現場の理解がより深まることとなりました。

戦略コンサルタントの世界でも同様で、自流の仮説を立てて、それをデータで検証するという人がいる一方で、先入観をもたずにデータを分析することで示唆を出す人もいます。
この両輪が必要であり、それを仕組みとして成り立たせないと、この先、生き残っていくことは難しいと考えます。
また、現在のようにデータが大量に得られる時代にあっては、この両輪で運用することで判断を誤りにくくできる効果もあります。

その一方で、現実問題としては、投資的な観点を持たず目先の出費に捉われてしまうことで、安易に自前で解決しようとしてしまいがちであることも事実です。
この点、例えばDX推進部門が投資費用を負担したり、サブスクのような形態にするなど、仕組みの検討が必要でしょう。

KPIの重要性

他社と比較したとき、中部電力グループはKPIの設定が少し弱い傾向があるように感じます。何を達成するのかを決めてからプロジェクトに取り組むことで、結果に結びつきやすくなるメリットがあります。
TCAはKPIを非常に重要視していますので、共に活動することによってKPIの文化・機能が鍛えられていくことも期待されます。

TCAの案件は、しっかりとKPIを設定した上でスタートします。KPIの設定には、事業会社や主管部門のオーソライズが必要となりますが、達成できそうな項目や数値をKPIとしたがる傾向がありますので、「できること」ではなく「達成すべきこと」からKPIに落とし込めるようになることが大切です。

また、中部電力グループはボトムアップのアプローチが根強く浸透しており、KPIについてもトップダウンでの推進だけでなく、現場を尊重しながらボトムアップのアプローチも踏まえつつ進めていく方がなじみやすいように思われます。

Vol .3 データの蓄積と活用に向けた戦略 に続きます。