ARCHIVE

第六回 Vol.3 データの蓄積と活用に向けた戦略

deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco
deco

データの蓄積と整理

データを活用するためには、まずデータを集めて整理することが必要です。中部電力のITシステムセンターで構築を進めているデータレイクに関連し、そのための戦略を整理しています。データの収集に際しては、あまりにDB化を徹底するとデータが集まらないため、データ形式を限定しすぎないようにしていますが、同時に今後に繋がるようなデータ蓄積にかかるルールの整備も進めています。
問題は、業務の属人化と同様に、データについても属人化しているケースが多いことです。データを共有するか否かも属人化されてしまいがちなので、共有を妨げない仕組み作りも大切です。
この点、目的をもってデータ蓄積している会社は成功しています。人間には意味がわからないことはやらないという心理があり、目的を明確にすることでデータの入力が積極的になることがわかっています。また、その際のインセンティブ設計も非常に重要で、例えば医療の世界では、医者のアノテーション作業実施を評価とつなげることでインセンティブとしています。うまく目的を設定し、インセンティブを与えていかなければ、保有しているデータを共有してもらうことはできません。

データの活用

データを活用して、ビジネスの課題を解決するためには、その手法についてある程度の勘所をつけられる人材が重要です。なぜなら、業務に関する感覚をもちつつ世の中の最新手法を把握していれば、「この案件はどういう手法で、だれが対処すべき」という的確な整理ができるからです。
ACNではAIセンターという仕組みがあり、そこでは様々な組織の人が課題解決の手法について気軽に相談することができるようになっています。また、契約がサブスク形式となっていることも、気軽に利用しやすい理由の1つです。このような仕組みがあると、課題解決の端緒となり得るため有効です。

一方で、課題ありきではなく、データ起点で考える場合には別の要素が重要となります。
データガバナンスを中央集権的に取り組んでいく場合、とりあえずデータ溜めていくというのではうまくいきません。
なぜなら、IoT機器のようなモノから出てくるデータと、人から得られるデータは全く内容が違い、この違いはデータの内容・性質によって広く当てはまるからです。モノの場合は機械から出てくるため大量のデータを取り扱う必要があるのに対し、人から得られるデータはプライバシーに配慮し、内容に応じて扱いを変えることを求められます。
また、社内のデータを外部データと紐づけする場合、うまく紐づけできるかどうかによって、データの価値が大きく変わるため、その手法は慎重に検討しなければなりません。
特に、ディープラーニング等で非構造データを用いる場合には、どのようにラベリングして学習させるかが重要となります。
全ての手法に対応する分析基盤を最初から全て抱えると高コストになるため、「業務でこういったことをやりたいから、こういうデータを貯めるべきで、そのためにはどういう分析基盤が必要だ」という戦略的な思考が必要となります。

データを価値に変える4つのパターン

データを集めてそれを価値に変えていく場合、戦略的観点で4つのパターンが考えられます。
1つ目は、圧倒的なデータ量、または他では手に入らない希少なデータを価値にかえるパターンで、グーグルが代表例として挙げられます。
2つ目のパターンは異なるタイプのデータを組み合わせて価値に変えていくというもので、アリババなどの企業が該当します。このパターンは、中部電力グループに馴染みやすいと思われます。なぜなら、電力供給を通じ人の生活に関わるデータを把握したうえで、そこにその人の多角的なデータを合わせることによって、価値を生み出していくということが、まさにこのパターンに当てはまるからです。
3つ目は、AIそのものが持つ力によって価値を生み出していくというものでアクセンチュア等が該当します。
そして最後は、デジタルツインなどシミュレーションにより価値を生み出していくもので、日立などの企業が代表例として挙げられるでしょう。

どのパターンで価値創出に取り組むのかについては、今後、戦略を練る必要がありますが、既存のデータと価値創出のために足りないデータを明確にした上で、不足部分のデータを自分で集めるのか、他社と組んで集めるのかなどを考えることが重要です。その上で、そこから価値を引き出していくステップに進んでいくべきと考えられます。

Vol .4 DX推進人材の育成とやりがいの醸成① に続きます。