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第四回 Vol.8 DXの成功に向けて②

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経営トップによる意思表示と具体的施策

これまでに紹介した事例から、DXの推進には、目的やビジョンといった、経営層の意思が必要であると言えます。
なぜならば、DXを進める上では社内で目的が揃いにくく、特に利害関係が相対する時に動きにくくなるという課題が生じることが多いためです。
トップのコミットメントとしてどのような水準のDXを進めたいのかが明確に示されていることと、利益実感をどのように作っていくのかが重要です。

中部電力グループにおいても、DXの推進機能において経営の意思や施策を明確にすることがポイントです。そこに集まれば課題が解消でき、かつ、経営の意思を反映できる実践の場としてCoE(Center of Excellence/組織を横断する取り組みを行う中核部署や研究拠点)をしっかりと構築できるかどうかが鍵となっていくでしょう。
これによって、情報収集をしながら、ガバナンスを効かせるところとグループとして推進するところを明確にすること、さらに、長期目線でタレントマネジメントを行っていくことが、事例が示唆するところです。

また、短期的にも財務・非財務成果について分かりやすい形で提示できるものを意図的に組み込む施策も必要です。現場部門の視点からは、CoEに頼ることで経営資源や知見を使いつつ自らの課題が解消できるといったインセンティブを与える仕組みを作ることも求められるでしょう。グループ大ではKPIでうまく案件をコントロールしながら進めていくことが重要です。
そしてやはり人材や資機材、資金といった経営資源が必要で、経営判断として適切に投下していくことが大切になります。

一般的な話としては、どの部署のどのような仕事を対象にDXを進めるのかという問題があり、本店業務はある程度本体で実施すると考えられます。
しかし、現場業務をどのように扱うのかが難しいところです。現実的な進め方としては、紹介した事例で実施されているような方法が良いといえるでしょう。
なぜなら、事業会社・部門の経営層に意識を浸透させるにはそれなりの時間を要するからです。実務的な部分から成果を積み上げつつ、まずは取り組みの意義を理解してもらうことが重要です。
さらに、DXを進める上でもう一つ重要な点として、推進する立場の人が長く継続する必要があるということが挙げられます。
ある程度の期間を継続して牽引できるキーマンがいなければ、変革を完遂することは難しいと思われます。現実的には、牽引役としてのキーマンを複数名育成しておく必要があるでしょう。

時代を超えた知見の共有・技能/スキルの継承を見据えて

経営課題としてのDXについて部門長を交えて議論しても、それが下部組織に上手く伝わらないことや、少なからず抵抗があることもあります。
しかし、いざ取り組みが開始されると、急速に変革が進むこともあります。変革が進む部門では、課題や方針が上から下まで伝わっていることが特徴的となっています。
その一方で、現場レベルでDXを進めたいと思っても、ミドルマネジメント層の理解が進まずに却下されることも起こります。そこを打破するための方策についても、よく考えねばなりません。

中部電力では、数年前から強力なリーダーシップのもと、TPS(トヨタ生産方式)の導入を始めています。
アプローチは違いますが、やろうとしていることは同じです。個々の管理職にコミットさせる部分や、皆で共有しながら進める部分など、DXについても同様の仕組みをうまく使うことができると考えられます。
ただし、TPSの方は「これだけ工程が減った」ということが可視化できるためミドルマネジメント層にとって分かりやすいのですが、DXは上手く成果を表現しにくいケースもあります。このギャップをどう埋めていくのかについても考えていかなければいけません。

いずれにせよ、現在のアナログな業務手法が本当にサステナブルなのかを考えていくことが必要です。一度取り組みが進んでも、何年か経つと元に戻ってしまうこともあります。
時代を超えた知見の共有・継承をしていくことを考えると、現状の業務手法をDXしていくことが大切であると言えるでしょう。