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第五回 Vol.3 中部電力グループにおけるMLOps①

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MLOpsの適用事例

中部電力におけるMLOpsについて、業務適用に進んでいる案件を紹介します。

事例Aは業務を実施する前に、想定される関連情報をファジーに提供するという上長業務の一部を担うものです。業務の効率化が目的ですが、現在は第一弾として、事例検索の部分までを実装しており、今後はその実対応検索について展開していく予定です。
事例Bは、属人化しているノウハウを組織化しながら外部の環境変化を捉え、業務を最適化することを目的としています。まずは、MLOpsに則ったシステム構築を検討してから、その次に精度の高いモデルを実装していくという流れで進めています。
事例Cは、適切な資材使用量の予測によるコスト圧縮を目的としており、まずは発注誤差を抑える部分について、スコープと対象資材を限定しながらスモールスタートしています。
最後の事例Dですが、この事例においては、個別最適ではなく全体の運用を最適化するところにポイントをおいています。熟練者の暗黙知を形式知化することを目的としており、他の業務にも展開できると考えています。
また、業務の最適化が電力供給の安定性向上に繋がるため、社会的意義も大きいと考えています。
ただし、実際の業務適用にあたっては、関係者間でコミュニケーションを密にとって進めていく必要があります。

リスクの考え方

モデルの予測精度を上げることは重要ですが、万一、現実では違う状況が発現した際には大きな損失を出してしまうことも懸念されます。したがって、1点だけを想定するのではなく、想定に対するボラティリティを考慮するというVaR(バリュー・アット・リスク/予想最大損失額)的な発想でリスク管理をすることも必要です。
つまり、予測精度を上げると同時に、リスク管理をしながら業務を進める、つまり業務を変えていくことが大切なのです。
この点については、TCAのプロジェクトチームの努力によって徐々に理解が広がってきています。特に年齢層が若い方はこのような概念の理解が早い印象です。ここで紹介した事例については、基本的に成功していると考えられます。
なぜならば、主管部からは、リスク等を踏まえて幅を持たせて結果を示して欲しいと言われており、TCAとしても、それをコントロールすることが大切であるというコミュニケーションをとることができているからです。
実際、TCAのモデルでは想定の根拠についてホワイトボックス化を実施しており、様々な制約を入れながら、リスク管理をした上で主管部に活用してもらう方向に進んでいます。
既に実行段階に入っているプロジェクトもありますが、モデル作成者であるTCA、主管部、システム開発者であるCTIと、三位一体の体制についても適切に検討していくことが重要です。

エンハンスのポイント

PoCではユーザーとTCAの2者間で簡易的な検証をしていきますが、エンハンスの段階では既存業務の変更や既存システムとの連携が必要になるため、単にPoCモデルを実装しただけで完了というわけにはいきません。
特にシステム化のステップでは、既存システムから大きくUI(ユーザーインタフェース:使用者がコンピューターを操作する上での環境)が変わることへの不安があったり、構築した分析モデルの設計思想がうまく伝わらないなどの理由により、システムに上手く組み込まれない可能性があります。

また、実際の運用を見据えて、精度が低下した場合の改修も念頭にシステム化する必要がありますが、ユーザーの立場からすれば、「運用はプログラムを実行するだけ」という意識になってしまいがちです。環境変化に応じて精度を改善していくという意識付けをユーザーに対して行っていくことが必要になってきます。

さらに、システム化においてはDXの「X(Transformation)」の部分をどのように作っていくのかを明確にしながら作業を進めていくことが大切です。当然、モデル作成時には、どのように業務を改善するかという強い想いを持って検討しているはずなのですが、それをシステムにうまく連携させるために関係者間で密にコミュニケーションする体制が必要になります。

このようなエンハンスの案件は今後さらに増えていくことが想定され、TCAが関わらないところで進む案件も出てくると考えられます。モデル作成・システム化・運用について、それぞれのフェーズにクローズして進めれば良いのではなく、一連の流れを意識してナレッジとして貯めていく体制が必要です。それが正にMLOpsの考え方であると言えます。
その一方で、運用のしやすさもシステム化にあたっては重要な観点であり、持続的な運用の可能性やその運用のための人材育成といった観点も必要なのが難しいところです。

MLOpsの適用にあたっては、モデル作成者であるTCA、主管部、システム開発者であるCTIといった3者が三位一体で動く必要があるため、例えば経営戦略本部のDX戦略推進室にMLOpsの専任チームを設ける等の、中部電力グループに適した標準的な枠組みが必要となります。

Vol .4 中部電力グループにおけるMLOps② に続きます。